オールソール交換修理
に対して「なかじま」の見解


〜オリジナルに近づけるのが正解とは限りません〜



下記はリックオウエンスのオールソール交換ですが、オリジナルとは全く違う仕上がりです

リックオウエンスのオールソール交換に付いての説明、1


「もっとオリジナルに近づけてほしい!」という声もありそうですが(^^)
これは、あえてこの形状で仕上げています

それは何故なのか?順番に説明します



●近づけるほど違いが気になる

例えば貼り替えの際にソール側面にオフホワイトの革やラバーを貼ったり、それらを二重にして真ん中で段差をつければもっとオリジナルのデザインに近づけることができます
でも、そうやって近づければ近づけるほど仕上がりが偽物っぽくなってしまうんです

リックオウエンスのような

●熱狂的なファンが存在し
●新規販売価格が高額で
●中古市場にも大きな需要がある商品


は、必ず偽物が出回ります

中には程度の低い個体もあり普段から接している人間なら見た瞬間に違和感を覚え、手に持つとすぐに「違う」とわかります
そんな「程度の低い偽物」に近づいてしまうのが「頑張ってオリジナルに近づける修理」なんです


例えばオリジナルのソールにゴムを貼って補強しても「あ、長持ちさせるための加工だな」と感じますが、オリジナルに近づけたソール交換は「・・・んん?(本物か?)」となるかもしれません


これは修理の鉄則ですが、オリジナルと「同じ」にできないのなら近づければ近づけるほど、その違いが顕著になります



リックオウエンスのオールソール交換に付いての説明、2



●なら精度を高めれば?

それなら側面のラバーを業者に特注して

「極限までオリジナルに近づければ?」
「見た目には判別不能なほど近づければ?」

という疑問がわいてきます

当然そのことは頭に浮かびましたので、ゴム成型の専門業者様に見積もりを取ったところ・・

「似た感じのパーツを作ることはできるがロットが少なすぎて非常に高額になってしまう」

とのことでした

具体的は、1足両足分の側面ラバーが15万円ぐらいかかり、それを使ってオールソール交換を実施すると両足で20万円ぐらいの修理費になります

「それなら15万円程で販売されている新品のジオバスを買ったほうが安い!」

ということになります

※ロットを1000足にすれば単価は下がりますがそもそもの需要が少なく商売になりません


リックオウエンスのオールソール交換に付いての説明、3



●限定モデルならその価値もあるのでは?

とはいえ、定番なら高額修理より買い換えが妥当でも例えば・・

●金額以上の価値がある限定品や別注の特殊なモデル
●アッパーにクロコダイルの革を使っているモデル
●クロムハーツとのコラボモデル(非常に高価!)


などなら上記のような「高額修理費」をかけてでも修理する価値があるかもしれません

ところが世の中には「ソールスワップ」という修理方法が存在しています(当店非対応)
これは「ソールのハメ替え修理」のことで、ソールがキレイな状態の「別のスニーカー」を用意しそこからソールを丁寧に剥がして傷んだソールと交換する修理方法です

これなら仕上がりはオリジナルと全く同じ!

つまり程度のいい中古を数万円で手に入れそれをハメ替えれば良い、ということになります

※スワップ作業は1〜2万円程度(お店によります)

希少性が高かったり「超高額!」なスニーカーなら選択肢として「アリ」かもしれません
ということは、高額な(のに全く同じではない)特注ラバーに「出番はない!」ということになります


リックオウエンスのオールソール交換に付いての説明、4



●ただ、リスクもあります

とはいえ、そもそも経年劣化したからオールソール交換を検討しているわけですよね?
ならばソールスワップをしてもそのソールも同じ素材なので、それもまた数年程度でダメになる可能性が高いです

「それならまたソールスワップすればいい♪」

と思うかもしれませんがそれはそれでリスクがあります

一度ガチガチに貼りつけたソールを剥がすには熱をかけたりシンナーでボンドを緩くしたりしてどうにかこうにかして剥がします
(思っているより作業は地味で大変です)

そうするとどうしてもアッパーの革にダメージを与えてしまいます

熱をかければ革のたんぱく質が変質しますしシンナーが革に与える刺激も気になります
しかも剥がした後に残る古いボンドはグラインダーで削り落としますので回数が増えるといずれ革が破れてしまいます

つまり、ソールスワップは一度の貼り替えなら問題なくても二度、三度行うとアッパーの革がドンドン傷んでしまうんです

しかも・・

「どれだけ丁寧にはがすか?」
「グラインダーでどれぐらい削るか?」

などは作業担当者にゆだねる形になりユーザーにはコントロールできません

さらに・・

革が深刻に傷んだとしても新たなソールを貼れば見た目にはわかりません
リックのソールは側面の大部分を縫い付けて固定していますので、アッパーの革が少々傷んでいても力技でソールを取り付けることも可能です

そうなるとユーザー側は

「革がボロボロでも気づかない可能性が高い」

ということになります


ある日、急にソールがハガレてしまい慌てて修理店に持ち込んだ時に

「ああ、これはもう革の寿命ですね」

と言われて初めて気づくことになるんです


※注意点ですが※

ソールスワップがダメだと言っているのではありません
そういったリスクを許容できるかどうか?それぞれがご判断いただきたいんです



リックオウエンスのオールソール交換に付いての説明、5



●メンテナンス時にダメージを与えない



こういったリスクを考えた上で当店ではああいった「オリジナルと違う仕上げ」を採用しています

修理方法は・・

アッパーの接着跡に革を巻いて隠し、底面にスポンジを縫い付けて土台にし、その下にゴムソールを貼っています

この方法なら、その後のメンテで貼り換えるのはゴムソールなのでダメージを与えるのはスポンジミッドソールになります
貼り替えの度にスポンジの表面を薄く削って古いボンドを除去しますが、それで与えてしまうダメージは限定的でそう簡単に深刻な事態にはなりません

また、仮にスポンジがダメになったとしても底縫いの糸を切って貼り換えることも可能です
これは、スワップの度にアッパーに与えるダメージとは次元が違うほど頻度も低く影響も小さいです

しかもスポンジを貼り付けているのはアッパー下部に巻いた革なので、その革が少々傷んだとしてもアッパーには何ら影響がないんです

このように当店のオールソールは、アッパーに与えるダメージを最小限にしながら20年、30年と履いていける構造になっています
修理後は「適切なタイミング」でカカトやつま先を修理すればキレイな状態で長く履いていただけます

ただその代償として「見た目や履き心地が全く別の靴」になってしまいます


リックオウエンスのオールソール交換に付いての説明、6


いかがでしょうか?(^^)
ソール交換をご検討の方は長い目でみてリスクとリターンご検討くださいませ







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